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ストレッチはケガ予防にならない——でも股関節&体幹メニューでオーバーユース障害が39%減った(2024 RCT)

3 studies · 2 RCTs · 2024 BJSM RCT

走る前にストレッチしても、ケガは防げません。じゃあ何が効くのか?Br J Sports Medに載った初心者ランナー325人の2024年RCTが答えを出しています。

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ストレッチはケガ予防にならない——でも股関節&体幹メニューでオーバーユース障害が39%減った(2024 RCT)

静的ストレッチは、ケガ予防の道具じゃありません

今日はちょっと耳が痛い話からいきます。運動前のストレッチは、ケガのリスクを目に見えて下げてくれません。

これは気合い論じゃなくてデータの話です。Leppänenら(2024)のRCT(被験者をランダムに分けて比較する実験)では、初心者ランナー325人を24週間追って、いくつかの準備メニューを比べました。そこで「多くの人がやってるやつ」をそのままやったグループがありました。そう、静的ストレッチです。筋肉を伸ばした状態でじっとキープする、あれですね。そのグループが基準(コントロール)になったんですけど、結果は…いちばん成績が悪かったんですよね(Leppänen et al., 2024)。

静的ストレッチって、やった感があるし、ケアしてる感じもします。でも、研究結果が何度も同じ場所に着地しています。ストレッチだけでは、壊れていくのを止められないってことです。

ストレッチ群はコントロール(比較の基準)でした——そしてケガの結果がいちばん悪かったグループでもあります。

Leppänen et al. (2024). Hip and core exercise programme prevents running-related overuse injuries. Br J Sports Med.

本当に効いたのはこれ:股関節&体幹のワーク

同じ2024年のRCTで、別のグループは静的ストレッチをやめて、股関節と体幹のエクササイズメニューに置き換えました。骨盤まわりとお腹まわりを狙う動きで、毎回のランの前にやる形です(Leppänen et al., 2024)。

結果はハッキリしていました。

- ストレッチのコントロール群に比べて、週あたりの平均オーバーユース障害の有病率が39%低い
- 重めのオーバーユース障害が52%少ない——練習を止めるレベルのやつです
- 全体のケガ発生率が34%低い(hazard ratio 0.66)

ここが面白いんですけど、走るメニューもトレーニング量も同じなんです。違ったのは「走る前に何をやったか」だけ。要するに、プレランの中身が効いたってことですね。

理屈もちゃんと通ります。股関節と体幹——お尻(臀筋)、股関節外転筋、体幹の深い筋肉——ここは下半身全体の衝撃吸収と安定の要です。弱かったり、目覚めてなかったりすると、1歩ごとに負担が膝・足首・足に寄っていきます。逆に、体の中心に近いところ(股関節〜体幹)を強くしておくと、膝や足首みたいな末端の関節が受けるダメージが減るんですよ。

足首&足のグループは、減るどころか急性のケガが増えました

同じRCTには3つ目のグループもいました。膝より下の小さい筋肉を狙う、足首&足のメニューです(Leppänen et al., 2024)。

このグループは、ストレッチのコントロール群と比べてオーバーユース障害が有意に減りませんでした。それどころか、急性のケガの発生率はコントロールより3.6倍高かったんです。

ここ、2つの意味で大事です。1つ目は「走る前に何かやれば、ストレッチより何でもマシ」ではないってこと。どこを、どう準備するかが効きます。2つ目は、準備運動でも組み方が悪いとリスクが上がることがある、という注意喚起です——このあともう少し触れますね。

足首&足の準備は、ストレッチのコントロール群より急性のケガが3.6×多かった——どこをやるかで結果が激変します。

Leppänen et al. (2024). Hip and core exercise programme prevents running-related overuse injuries. Br J Sports Med.

じゃあストレッチって、何の役にも立たないの?

役には立ちます。ただし、ケガ予防じゃないってだけです。

Kanedaら(2020)のRCTでは、動的ストレッチ(レッグスイングみたいに、可動域の中を繰り返し動かすやつ)と、静的な条件を比べて、ハムストリングの柔軟性と筋機能を見ました。その結果、動的ストレッチのほうが、SLR(ストレートレッグレイズ)の可動域や、受動的な膝伸展角度がより改善しました。

つまり、動的ストレッチは短期的に可動域——関節がどれだけ動くか——を上げてくれます。これは使いどころがあります。セッション前に可動域が出ると、スクワットやヒンジで「本当は取りたいのに取れないポジション」を取りやすくなりますし、筋肉の硬さがその場で少し下がる可能性も示されています。

でも、ウォームアップで可動域が上がることと、ケガ予防は別物なんです。柔らかい=腱や筋肉が負荷から守られる、ではありません。ケガを減らすのは、筋力・安定性・組織(筋肉や腱)の耐久力であって、つま先に触れる能力じゃないんですよ。

動的ストレッチがウォームアップで「何をして、何をしないのか」をちゃんと知りたいなら、dynamic vs static stretchingで35本の研究をまとめて解説しています。

ウォームアップ全体の話——順番は?種類は?何をもって「準備OK」?——は、how to warm up before liftingでRCT 4本をベースに整理しました。

筋膜の研究が足してくれること——そして、証明できていないこと

Colonnaら(2024)のナラティブレビューでは、筋膜(筋肉を包んだり、筋肉同士の間にある結合組織)について、ストレッチが組織の張力や痛みにどう影響しうるかを整理しています。筋膜には神経の受容器がたくさんあって、そこで張りのバランスが崩れると、筋膜性疼痛——トリガーポイント由来の、広がるような鈍い痛み——と関係することがある、という話です。

このレビューは正直です。ストレッチで筋膜の不調を治せる、という根拠は限定的だと書いています。仕組みとしてはあり得ますよね。筋膜を伸ばして異常な張りを減らせば、痛みの信号も減るかもしれない。でも、臨床のデータはまだ薄い、ということです。

一方で、はっきり後押ししてくれる考え方もあります。組織のコンディションは「部分」じゃなくて「全体」で決まる、ということ。筋肉・結合組織・神経系は全部つながっていて、互いに影響し合います。だからこそ、筋肉の長さだけじゃなく、強さ・コントロール・動きの質まで含めた準備のほうが筋がいいんですよね。

筋膜には神経の受容器がぎっしりあります。張りの乱れが痛みを引き起こす——ただ、ストレッチだけでそれを直せる根拠はまだ限定的です。

Colonna et al. (2024). Myofascial System and Physical Exercise: A Narrative Review on Stretching. Cureus.

じゃあ何をやる?現場で使える形にするとこうです

今ある根拠を踏まえると、運動前のルーティンはこんな感じが現実的です。

1. 静的ストレッチはやめて、動きの準備に置き換える。
動的な動き——レッグスイング、股関節回し、バックスクワットの自重版、グルートブリッジ——こういうのが、30 secじっと伸ばすより組織をうまく起こしてくれます(Kaneda et al., 2020)。体温が上がって、神経系もスイッチが入りますし、これからやる動きに近いのが強いんです。

2. 股関節&体幹は「ウォームアップ」じゃなく、トレーニングの優先事項にする。
Leppänenらで39%減ったのは、1回の儀式じゃなくて、継続したメニューの力です。これはトレーニングなんですよ。グルートブリッジ、片脚種目、股関節外転系、体幹の抗回旋(ねじれに耐える)系——このあたりを押さえましょう。

3. 静的ストレッチは、やるなら運動後に回す。
ストレッチが好きなら、それはそれでOKです。長期的に柔軟性を上げたい目的でも使えます。ただ、筋肉が温まっていて、これから高い出力を求めないタイミングが向いています。運動後なら問題ありません。運動前の「ケガ予防目的」には向かない、というだけです。

4. 股関節を整える前に、下腿を細かくやりすぎない。
RCTでは足首&足のグループが、急性のケガでストレッチのコントロール群より悪化しました。まずは体の中心に近いところ——股関節と体幹——から。足首の個別ワークは、そのあとで十分です。

Planfitだと、ここをこう落とし込みます

Planfitは、セッション前に静的ストレッチを「お決まり」として入れません。根拠を見ると、それが守ってくれるものじゃないからです。

その代わりに、重い種目に入る前に“動きに合わせた”ウォームアップセットを組みます。さらに、漸進性過負荷でセッションごとの負荷を追いかけつつ、部位ごとのボリュームも管理して、組織が吸収できる以上のストレスを溜めないようにします。ケガを減らす考え方は、メニューの中に最初から組み込まれているんです。

参考文献

  1. Leppänen M et al. (2024). Hip and core exercise programme prevents running-related overuse injuries in adult novice recreational runners: a three-arm randomised controlled trial (Run RCT).. Br J Sports Med. 10.1136/bjsports-2023-107926
  2. Kaneda H et al. (2020). Effects of Tissue Flossing and Dynamic Stretching on Hamstring Muscles Function.. J Sports Sci Med
  3. Colonna M et al. (2024). Myofascial System and Physical Exercise: A Narrative Review on Stretching (Part I).. Cureus. 10.7759/cureus.75077