マグネシウムで筋肉のつりは止まりません — 足りてない人なら別です(Cochraneの2020年レビュー)
4 studies · Cochrane 2020 meta-analysis
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よくある話 vs データが言ってること
マグネシウムって、スポーツサプリの中でも売れ筋ですよね。「つりに効く」みたいなノリで、ほぼパッケージに書いてある勢いです。
でも問題はここなんです。Cochraneの2020年レビュー(いろんな研究をまとめて、いちばんハッキリした答えを出そうとするやつです)が、骨格筋のこむら返りに対するマグネシウム補給のランダム化試験を全部チェックしました。結論はかなりストレートで、多くの人では、つる回数・痛みの強さ・続く時間を安定して減らすとは言えません(Garrison et al., 2020)。
これ、マイナーな意見じゃないんですよ。Cochraneは医療系の根拠として「ここ見とけばまず安心」って言われるくらい信頼されています。もしマグネシウムが広く効くなら、ここでちゃんと結果が出ているはずなんです。
Magnesium supplementation does not reliably prevent skeletal muscle cramps in most people.
— Garrison et al. (2020). Magnesium for skeletal muscle cramps. Cochrane Database Syst Rev.
運動中のつりは別枠?— それでもハッキリ効くとは言えません
「運動でつるのは別でしょ」って思いがちです。汗で電解質が出る→マグネシウムが下がる→つる。たしかに、感覚的には筋が通ってますよね。
ただ、Cochraneのレビューは複数のタイプの人たちを含んでいて、運動がきっかけのつりについても見ています。その上で、そこでも有意なメリットは確認できませんでした(Garrison et al., 2020)。夜中につりやすい高齢者でも同じで、ここもマグネシウム系の宣伝が強い層なんですけど、結果は変わりません。
「つり=汗=マグネシウム」って流れは分かりやすいです。でも、最初からミネラルが足りてない人じゃない限り、根拠がついてきません。
ここが分かれ道です。これを押さえるだけで、話がガラッと変わりますよ。
不足はちゃんとあります — そして不足すると、つります
ここから少しだけ話が細かくなります。マグネシウムが無意味って話じゃないんです。むしろ必須です。
マグネシウムは、神経の伝達や筋肉の収縮に深く関わっています。筋肉に「動け」と命令する電気的なやり取りを整えて、そして大事なのが「止まれ」もちゃんと効かせる役目があるんですよ。血中マグネシウムが低すぎる状態(低マグネシウム血症=血液中のマグネシウムが少ない状態)になると、教科書レベルで筋肉のけいれん(つり)が起きやすくなります。だるさが出たり、重いケースだと不整脈につながることもあります(Bosman et al., 2021)。
問題は「マグネシウムが大事じゃない」じゃなくて、サプリを飲んでる人の多くが、そもそも不足してないことなんです。
数値が正常なら、足しても直りません。そこは壊れてないので、直す場所がないんですよね。
Low magnesium is a real cause of cramps. But most people supplementing aren't actually low.
— Bosman et al. (2021). Genetic and drug-induced hypomagnesemia. Proc Nutr Soc.
じゃあ、どんな人がマグネシウム不足になりやすい?
本当のマグネシウム不足は珍しすぎるわけじゃないです。でも、全員が全員ってわけでもありません。ちゃんと「なりやすい条件」があります。
- 食事の内容 — マグネシウムは葉物野菜、ナッツ、種子、全粒穀物に多いです。ここが少ない食生活だと、摂取量も少なくなりがちですね。
- 特定の薬 — PPI(胃酸を抑える逆流性食道炎の薬)や高用量の利尿薬(いわゆる水薬)は、マグネシウムが減りやすい原因としてよく知られています(Varghese et al., 2020)。
- 長期間の大量発汗 — 1回の練習というより、ハードなトレーニングが続いていて、しかも食事からの摂取がずっと少ないケースです。
- 腎臓や吸収の問題 — 腸や腎臓がマグネシウムを扱う仕組みに影響が出る状態ですね(Bosman et al., 2021)。
透析中の人はこの点をかなり細かく追われるんですが、低マグネシウム血症(血清マグネシウムが0.7 mmol/L未満)は患者の10–20%に見られます(Varghese et al., 2020)。これは特殊な臨床グループですけど、「不足は実際に起きるし、起きたら影響が大きい」ってことの分かりやすい例です。
もし当てはまる条件があるなら、最初にやるべきは血液検査です。サプリを買う前に、まず現状確認しましょう。
妊娠中(つりが多い時期)でも — 効いたとは言えませんでした
妊娠中の脚のつりって、週に2回以上起きる人が30–50%もいます(Liu et al., 2021)。この層にはマグネシウムがよく勧められますし、妊娠でミネラル需要が増えると考えると、たしかに「効きそう」なんですよね。
でも2021年のメタ分析では、332人の妊婦さんを対象にした4本のRCT(被験者をランダムに分けて比較する実験)をまとめて検討しています。その結果、経口マグネシウムは、つる頻度を有意に減らしませんでした(weighted mean difference: −0.47, 95% CI: −1.14 to 0.20, p = 0.167)。プラセボと比べて「完全に治った人の割合」も改善しませんでした(Liu et al., 2021)。
いちばん「飲んだほうがいい」と言われがちな集団で、結果が出なかったということです。
ひとつ良いニュースがあるとすれば、副作用も有意差はありませんでした。危ないわけじゃない。でも、多くの人が期待している仕事はしていない、という感じですね。
4 RCTs, 332 pregnant women: oral magnesium did not significantly reduce leg cramp frequency.
— Liu et al. (2021). Effect of oral magnesium supplementation for relieving leg cramps during pregnancy. Taiwan J Obstet Gynecol.
運動中のつりの本命原因は?— 代わりにやるべきこと
最近のスポーツ科学では、「電解質が汗で減るのが主犯」という見方から少しずつ離れてきています。今は、神経筋の疲労(筋肉を限界以上に使いすぎて、運動神経が興奮しやすくなる状態)のほうが、ハードなトレーニング中〜直後に起きるつりの説明として有力だと考えられています。
じゃあ実際どうするか。ここが大事なんですけど、やることはシンプルです。
- その動きに慣らす。 特定の種目、特定の強度でつるなら、解決策は「段階的に慣らすこと」です。少しずつそのレンジの耐性を作っていきましょう(原則は progressive overload training を参考に)。
- サプリのラベルを見る前に、食事をチェック。 野菜、豆類、ナッツ、全粒穀物がそれなりに入っているなら、マグネシウムは足りていることが多いです。
- 胃酸を抑える薬や利尿薬を長く使っているなら、医師に相談してマグネシウムの検査を検討してください。
- 汗が原因っぽいつりなら、水分とナトリウムのほうが、マグネシウムより優先度が高いことが多いです。
マグネシウムのサプリはリスクが低いですし、本当に不足しているなら助けになる可能性はあります。でも「脚トレのあとにつったから」で飲むのは、ほぼ間違いなく本当の原因に刺さってません。
Planfitだと、ここをこう活かせます
トレーニング中のつりは、ほとんどの場合ミネラル不足というより「慣れ」の問題です。Planfitはセッションごとの負荷とボリュームを記録して、漸進性過負荷を自動で回しながら、種目ごとの履歴も見せてくれます。どこで体力(その動きへの耐性)が育ってきているかが一目で分かるんですよ。特定の種目でつるなら、答えはサプリじゃなくてメニュー設計にあります。そこをやってくれるのがPlanfitです。
参考文献
- Garrison SR et al. (2020). Magnesium for skeletal muscle cramps.. Cochrane Database Syst Rev. 10.1002/14651858.CD009402.pub3
- Liu M et al. (2021). Effect of oral magnesium supplementation for relieving leg cramps during pregnancy: A meta-analysis of randomized controlled trials.. Taiwan J Obstet Gynecol. 10.1016/j.tjog.2021.05.006
- Bosman CB et al. (2021). Genetic and drug-induced hypomagnesemia: different cause, same mechanism.. Proc Nutr Soc. 10.1017/S0029665121000926
- Varghese Z et al. (2020). A Higher Concentration of Dialysate Magnesium to Reduce the Frequency of Muscle Cramps: A Narrative Review.. Can J Kidney Health Dis. 10.1177/2054358120964078